好きな男性については『なりたい人』と『好きな(結婚したい)人』に大別される、というのが何となくわかってきた。森山大道は前者だし、サーストンは後者、というふうに。昔から、好きな人ナンバーワンは絶対山塚アイ(ヤマタカEYE)だったのだけど、よく考えたら、自分としてはEYEのようになりたくて、そして大竹伸朗のようなひとが好きなのだと思う。
さて、もう行ってから一週間経とうとしている『全景』ですが、
いや〜、行った人〜?
全
部
見
れ
ま
し
た
か
?
俺、とても無理。2000点よ、作品数。あんたピカソ(死後)か?ぐらいの数よ。しかも何というか、全てがフラットに年代順のため、さあここが山場!みたいなのが用意されてない(=全てが山場)。まぁ人それぞれ、ニューシャネルが好きな人、スクラップが好きな人、網膜好きな人、パズルパンクスが好きな人、ぬりどき好きな人、勝手にどうぞ!って感じ。
そーいうとこも、さすがだなと思った。
個人的には『日本景〜ぬりどき』あたりがとても好きだったので楽しめましたが---というか、「いい展示だった」とか「大竹伸朗イイヨネー」じゃ済まされない、ほんとに。
私の中では大竹伸朗って、ポップで切なくて、いいお父さんで、ちゃんと色々わかってる一流のバカで、パンクで……、って感じだったのですが、いや、それも全然間違いじゃないんだけど、何かもう、そういうの全部越えて、
『層』の人だなと。
そう思わせたのが『網膜』の一連の作品。点数もさることながら、ひとつひとつの『層』が凄い(これは画集とかじゃ良さがぜんぜんわからない。圧倒されました)。でも結局スクラップにもまったく同じことが言える。ぬりどきだってそうだ。
あ、そうか、点数の多さというより、層の多さなんだ。とね。
積み重ねという、行為的にも、目の前にある作品そのものについても言える『層』に感動しました、うん。
あと、フェイドイン/フェイドアウトの絶妙さ。『層』のね。
で、そのなかに奥さんと子供の絵なんかがポコッて置いてあるわけ。
いやー、素晴らしい。でも、しつこいんだけど、全然見きれてない。
あと1回行ったところでダメかもしれないんだけど……。
とりあえず、最低あと1回。
上野のダリ展と同じ料金なんだってー。もう絶対行かない。ダリ行く暇があったら全景ですよ。いやほんとに。
★
この大竹伸朗『全景』の開催にあたり、多数の雑誌がこぞって彼を特集していたけれども、私が唯一購入したのがリリー・フランキー監修の『en-taxi』。そこでみうらじゅんとスクラッパー対談をやっているんですが、凄く面白い。そこでグッと来た台詞は多数なんだけど、
みうら「何十年もやってるんですよ、俺らは。モテるとかモテないとか関係ないんだから。貼りたいんだから。やっぱ、貼る、貼らないの違いはでかいですよ。」
大竹「貼りたいだけなんだ。和紙と木工用ボンド、この二つが俺の幸せなの。貼るしかない。俺の人生、この六文字なのよ。現代美術とかどうでもいいんだけど、現美でやれば、貼る間口が確実に広がるでしょ。ただで糊を提供してくれるのが嬉しいのよ。」
ってやりとり……。凄くないですか。何なんでしょうか。
ほんと最高だと思います。
スクラップを見返すことに興味はないそうです。それはなんとなくわかるな。
あと、MO+の会報みたいなのに書いてあったんですが「10年後にMO+で展示することが決まってたら、誰だって一生懸命スクラップしますよ。そういう確約が何もないところで、どこまでできるか。好奇心の問題だね」みたいなこと言ってて。
いや〜、その実「ただで糊を提供してくれるのが嬉しいのよ」ですからね。もうほんとマイッタ。
あ、IDEAってやっぱりかったほうがいいでしょうか。まだ売ってるかな。あれ高いんだもん。
BGM:DOSH/THE LOST TAKE